8月6日、Amazonの創業者であるジェフ・ベゾスCEOがアメリカのワシントン・ポスト紙を2億5,000万ドルで個人買収し、世界中に激震が走ったのはまだ記憶に新しいと思います。実は今年の3月ごろから秘密裏に動きがあったというから驚きです。
ですが、稀代のIT起業家はなぜこのタイミングで、斜陽産業と揶揄される新聞メディアに巨額投資に踏み切ったのでしょうか?世界最大級の小売マーケットを作り、Kindleの販売で電子書籍市場も本格的に拡大させているAmazonが、どうして今「新聞」なのか、疑問に思う人も多いと思います。この疑問を解きほぐしながら、今後予測されるトレンドを紹介していきます。
1.紙媒体の衰退と新しいメディアの誕生
ベゾス氏は「紙の新聞は20年以内になくなる」と大胆にも予測しています。彼の予測が当たるかは別として、今後も紙媒体の新聞が衰退していくのは必然でしょうし、ワシントン・ポスト紙の一件がその流れをいよいよ決定づけたと言えるでしょう。
Amazonのメインビジネスは、もちろんeコマース事業です。ベゾス氏がワシントン・ポスト紙を買収したことで、eコマースとメディアの境界は急速に溶けつつあります。これはAmazonとワシントン・ポスト紙に限った話ではなく、今後そういった潮流が広まる可能性はとても大きいといえます。
ベゾス氏は短期的な損得は無視して、「実験」に注力する長期的な視野を持つ貴重な経営者でもあります。マスメディアがIT起業家の手中に収まったことでどういう化学反応が生じるのか、注目と期待が集まっています。
2.自社メディアからの情報発信を強化
Amazonはこれまで、AppleやGoogleといったシリコンバレーを代表する企業たちと、技術とアイデアの両面で切磋琢磨してきました。この戦いはもちろん今後も続いていきますが、Amazonは新しい情報発信の仕方を手にすることで、その競争から一歩抜きん出ようとしています。
ワシントン・ポスト紙が、従来通り政治経済の変調や予測に関して報道するのは間違いないでしょう。その上で、Amazonのマーケティングデータから考えられる最新の事実や予測、トレンドが新聞に載るようになることも考えらます。
自社に情報発信の機能を持たせることで情報公開までのスピードが格段に上がり、ターゲットをかなり絞った上での情報発信もできるようになるでしょう。
高まりつつある企業の情報発信の重要性
いかがだったでしょうか。今回の例は象徴的ですが、
“Think like a Publisher. (出版社の如く思考する)”
という言葉もあるように、ウェブトレンドの最先端を行くアメリカでは、「企業が情報発信機能を所有すること」が大きな流れとなっています。実際にアメリカで近年伸びているウェブサービスなどはこの情報発信機能が強いです。ブログ・Facebook・Twitter・YouTubeなどを用いて簡単に発信ができるからこそ、情報を社内で作成できる体制の有無が大きくその質を左右するわけです。
今回のジェフ・ベゾス氏の買収劇に見るように、情報発信機能外部から取り込むというトレンドはこれからも加速すると思われます。Googleがこの情報発信を推奨していることからも、Googleのプラットフォームを利用する日本にもこの波は確実に押し寄せます。
自社は情報発信ができているか?自社の属する業界や競合で、サイトから情報発信を行っているところはあるか?などの視点で考えてみると、トレンドへの対応の可否が見えてきます。ぜひチェックしてみて下さい。