サイト売買をスムーズに進めるために、ドメインやサーバーの譲渡方法について確認しておきましょう。
実際に契約まで進んだものの、そのあとの引き渡しでトラブルやエラーが発生することも少なくありません。
ドメイン・サーバーの譲渡パターンと、注意点について解説します。
目次
ドメイン・サーバー譲渡方法は大きく2つに分かれる
売り手側の環境によって細かい点は異なりますが、一般的なドメイン・サーバー譲渡方法は大きく2パターンに分かれます。
- ドメイン・サーバーの契約ごと譲渡する
- ドメイン移管・データ移行を行う
それぞれ詳細に見ていきましょう。
ドメイン・サーバーの契約を丸ごと譲渡する
1つ目は、ドメインもサーバーも契約アカウントごと買い手に譲渡する方法です。
いわゆる「名義変更」ですね。
売り手のサイト環境をそっくりそのまま引き渡す形になりますので、譲渡時のトラブルが起きにくく、移管にあたっての専門知識や追加費用も不要です(※サイトの構成やサーバーによる)。
売り手が1つのサーバーで複数サイトを運営しており、そのうちの1つを譲渡する場合はこの方法が使えません。すべてのデータを買い手に引き渡すことになります。ドメイン取得代行サービスで複数ドメインを契約している場合も同様です。
契約を丸ごと譲渡したい場合は、譲渡専用の環境を整えておく必要があります。
ドメイン移管・データ移行を行う
2つ目は、ドメイン移管ならびにデータを移行する方法です。アカウントごと譲渡するのが難しい場合の選択肢となります。
名義変更に比べると手続きや作業が増え、専門知識がなければ譲渡まで時間がかかるかもしれません。
概ね以下の流れで手続き・作業を進めていきます。
- 売り手のサーバーからデータをエクスポート
- 必要に応じて買い手がサーバーを新規契約
- 買い手のサーバーにデータをインポート
- 売り手のドメイン設定(DNS)を変更
- 必要に応じて買い手がドメイン取得サービスのアカウントを作成
- 売り手から買い手にドメイン移管
- 売り手のサーバーからデータ削除
環境によってはデータインポート時の再セットアップが必要となりますし、気づきにくい部分で何らかのエラーが起きているケースもあります。
また、売り手が移管作業を行う場合、買い手は売り手にサーバーIDやパスワードを伝える必要がありますので、契約時はパスワード管理面の確認もしっかりと行っておきましょう。
買い手が新たにサーバーを用意する場合、サーバーによっては初期費用が発生します。また、ドメイン移管は移管費用が発生します。そうした追加費用についてどちらが負担するのか、双方確認したうえで進めてください。
環境によってパターンは異なる
大きく2パターンに分けて解説しましたが、実際はドメイン・サーバーの譲渡パターンが別々になることもあります。
ドメイン |
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サーバー |
|
ドメインはアカウントを譲渡し、サーバーはデータ移行のみ行う、というケースもあります。
売り手・買い手の環境に合わせて柔軟に対応しましょう。
WordPressの譲渡例と確認すべき点
WordPressサイトの譲渡は、HTMLで書かれた静的なサイトに比べて作業量が増えます。
一般的な環境下の譲渡例をご紹介しますので、契約にあたって見落としている部分がないかチェックしてみてください。
環境例
ここでは以下の環境と仮定します。
- ドメインは他登録サービスに移管
- 売り手のレンタルサーバーAから買い手のレンタルサーバーBにデータ移行
- サーバーAの無料独自SSLからサーバーBの無料独自SSLに変更
- 運営者名・IDを変更(管理者1名で運営)
- 独自ドメインのメールアドレスを使用
- アクセス解析データも譲渡
譲渡する手順
- サーバーAのWordPressファイル・データベースをエクスポート
- サーバーBでドメイン設定
- サーバーBに全データインポート
- サーバーBに接続して移行状況を確認・必要に応じて再設定(要hostsファイル編集)
- サーバーBでメールアドレス作成
- サーバーBのDNS変更(サーバーAを参照)
- ドメインのネームサーバー設定をサーバーAからサーバーBに変更
- サーバーBでSSL設定
- サーバーBのDNSを元に戻す
- 売り手側でドメイン移管手続き
- 買い手側でドメイン移管手続き・入金
- WordPressに買い手を管理者としてユーザー追加
- 必要に応じてWordPressの管理メールアドレスを変更
- 買い手側で独自ドメインメール送受信設定
- 管理メールアドレスを変更する場合は、アカウントが必要なプラグインの連携設定を変更
- 売り手のWordPressユーザーを削除し、投稿者情報を買い手のユーザーに付け替え
- アクセス解析に買い手を管理者として登録し、売り手を削除
- サーバーAからデータ削除
この手順はあくまで一例となり、WordPressユーザー追加やアクセス解析データ譲渡は移管前に行ってもかまいません。
また、ネームサーバー設定変更が反映されるまでは72時間ほどかかる場合がありますので、滞りなく作業を進めても完全に譲渡するまで1週間ほど要します。
WordPress移行時の注意点
WordPressは移行用のプラグインが開発されていますし、サーバーによってはかんたん移行機能が用意されています。
しかし、サーバーAでは問題なく動いていたプラグインがサーバーBでは動かない、ということもありますので目視での確認も必須です。とくにセキュリティ系プラグインやキャッシュ系プラグインは注意してください。
デバッグモードをONにし、投稿編集や画像アップロードなどの動作に問題ないか一通り確認しましょう。
問題なく移行できたことを確認してから、サーバーAのデータを削除するのが無難です。
ドメイン・サーバ移行時の注意点
アカウント譲渡ではなく、ドメイン移管・サーバーデータ移行時はいくつか注意すべき点がありますので順に解説していきます。
手順を間違うとダウンタイムが発生する
売り手がレンタルサーバーの無料独自SSLを使用していた場合、手順を間違うとダウンタイム(サイトが閲覧できなくなる時間)が起きます。
買い手のレンタルサーバー設定時にDNSを変更すればダウンタイムなしで移行できるので、移行元・移行先サーバーの仕様をよく確認しておきましょう。
また、メールアドレスの引き継ぎにおいても同様です。独自ドメインのメールアドレスを使用しているのか、今後も使用するかを双方で確認しておきましょう。
ドメイン状態によって移管できないケースがある
サーバー間のデータ移行はスムーズに行えても、ドメイン移管でつまずくことがあるかもしれません。
以下のケースに該当する場合はドメイン移管手続きが行えないので、売り手側はドメイン状態を確認しておきましょう。
- ドメイン取得から60日未満
- ドメイン有効期限まで14日以下
- ドメイン有効期限が9年以上
- ドメインロックされている(認証コードが取得できない)
- Whois情報・アカウント情報に虚偽の記載をしている
- ドメイン取得代行サービスが移管に対応していないドメインを使用している
ドメイン移管ではなくアカウント譲渡すればクリアできることもありますので、双方で使用しているドメイン取得代行業者の要件を確認してください。
海外のサーバーを使用している
移行元が海外サーバーの場合、レンタルサーバーで用意されている「かんたん移行機能」が使えない可能性があります。
手動でデータエクスポートをすれば問題ありません。
サーバーの専門知識が必要になることがある
日本国内の共用レンタルサーバー同士であれば、移行は比較的スムーズに行なえます。
しかし、売り手または買い手のサーバーが専用サーバーやVPSの場合は別途セットアップが必要になるため、専門知識が必要です。
サーバー移行時だけではなく、その後の管理メンテナンスは自社で行えるのかどうかも確認しておきましょう。
まとめ
サーバー・ドメインの契約状況やサイトの中身により、最適な譲渡方法はケースバイケースです。
作業に慣れてしまえばスムーズに移管できるので、初めて譲渡する場合は何度か練習しておくとよいかもしれませんね。
売り手または買い手だけで対応するのが難しそうな場合は、移管代行業者へ依頼を検討するのも一つの手です。