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株式会社ネットショップ総研 長山衛様
小林
いつも長山さんがどういったことをしているか、簡単に教えていただけますか?
長山
端的に申しますとEC事業者への支援をメインに行っている会社ですね。その背景には、社名の通りでもあるのですがwebショップで販売するということに対しての研究をしたい、研究機関のような形でありたいというのが根底にありまして、その研究結果を通じて事業者さんに販売の方法論であったり考え方を提供するというサービスを行っています。僕自身長くECの畑にいたということもあり、それらの経験もふまえて、EC業界も流れが速い業界ですので次はこうなるであろうという予測も踏まえ、総合的なECに対しての研究を行っております。
小林
ありがとうございます。
長山さんが普段支援されているサイトは基本的に表に出られないで裏方として、支援されているのですか?
長山
そうですね、どうしても出ちゃうとそこに力がよっちゃうじゃないですか。できるだけ黒子に徹していますが、場合によっては出るときもありますよね。
小林
そうなんですね。 運営されているサイトで一番多いジャンルは食品関係ですか?
長山
そうですね。それには、理由があってですね。ECサイトでものを売る際に、一番難しいジャンルの商品からやって行くのが良いと思ったんですね。
食品というのは、実際に口に入れる事や、配送の冷凍便冷蔵便など配送も関連してきますし、当然賞味期限とか今でこそアレルゲンであったり、そういう問題もあると考えると一番面倒なのが食品ではないかと。そこからせめて行き、そこで一番になってから、いろんな商材に手を出して行こうという思いがあり、食品関連が一番多いですね。
小林
今まで長山さんは、サイトが売買できるということはご存知でいらっしゃいましたか?
長山
知っていましたし、過去に一度サイトを売買した事があります。
小林
それは売却されたのですか?購入されたのですか?
長山
買いました。ただ会社としてというよりも個人としてですね。
小林
どういったサイトを購入されたのですか?
長山
スイーツ専門の通販サイトを購入しました。、購入した当時は、サイトキャッチャーさんのようなサイトがある事をまだ知らなかったですね。
購入した理由は、販売している商材はとても良いのに売り方もったいないな、売り方を工夫すれば売れるのに、と思い、個人で買ってみました。5年くらい前の話ですね。
小林
5年前ですとサイトキャッチャーが2005年の6月から始まりましたので、その後ぐらいですね。
長山
サイトキャッチャーさんの歴史はとても長いんですね。
小林
そうなんですよね。サイト売買という事をサービスとして、日本で一番最初に始めさせていただきました。徐々に徐々には認知されていっているのですが、もっともっとサイト売買の市場を大きくしたいですね。
長山
サイト売買は、十分活用できるとは思いますね。凄く思います。サイト売買というのは、これからすごく有力なビジネスですよね。
小林
ありがとうございます。ECサイトで月商数百万位でなんかの事情があって他の仕事に専念したいとか、様々な事情があってサイトを閉じる人がいるじゃないですか。そういう人たちはECサイトが売れるって事をはなから頭にない知らないのでしょうか?それとも何か障壁があるのでしょうか?
長山
知らない事がほとんどだと思う。もしくは知っているとしても抵抗という障壁はあると思います。手続きが面倒くさいんじゃないかというような。ただ、往々にして知らない方の方が多いと思います。
小林
なるほど。
小林
でも、もったいないですよね、ある程度会員リストがあってお客さんもリピートしている。 月商規模が低いにしても、二人三人で運営しても、ご飯が食べられるようなビジネスだったり、もうちょっといろんな集客のノウハウを持っている人たちとか、あるいはそれにシナジーがある事業を持っている人だったらそれをのばすことが可能だってことがあると思います。
長山
おっしゃる通りですね。まあ、もったいないなぁと言うか、この閉店するサイトの数って凄い多いんですよ。
小林
どのくらい閉店されているのですか?
長山
Yahooが2万店舗あるんですね、Yahooショッピングの中のモールの中で。ですがもう昨年通算で見ると退店数が上回っている。これらほとんどは撤退閉店です。楽天は、かろうじてまだ出店の方が多いとですが、出店数がそうとう鈍化していて、3年前と比べてはるかに違いますね。
で、そういうのはやはり我々はECサイトの支援企業ですから、閉店する直前に相談に来られる方が多いんです。凄く端的に申しますと今こういう状態なんです、なんとかなりませんかねということで、僕らとしてもなんとかしてやりたいんですけど、全部が全部受けられないんですよ。
難しいですねとなると、閉店しかないですねとなるのがほとんどです。そういうところで僕も機転を効かせて、売買っていうところの提案までさせてもらっても良かったのかもしれません。これは逆にいうとECサイトの発展にもつながることで、そうすべきかなあとも思います。
小林
閉店数が凄く多いということですが、理由としては純粋に赤字だからとか、事業として成り立たないからという理由が多いですか?
長山
ええっとですね 赤字であるから閉店というのもたしかにあります。もっというとですね、赤字までいっていない。月商100万円ぐらいは出てて、ぎりぎり赤字にはなっていないといったお店が多いですね。
ただもう長期的展望が見えない、次の一手をどうすればいいかが打ち出せないという方が、閉店をするという方が多いですね。ですので僕は閉店せずにサイトを売却するという事が、、新しいECの撤退の形だと思うんですよ。
小林
「新しいECの撤退の形」 いただきました(笑)
長山
でもEC撤退するんだったら、売れるって可能性を考えればそれは新しい撤退の形だと思いますね。
小林
おっしゃる通りですね。
小林
ECサイトの運営のプロとして、通販サイトを購入することを検討している方へ、何かアドバイスをいただきたいです
長山
ありますあります。これは凄く深いと思います。もしかして売る側の人間より深いと思うんですけど。一番は可視可できないもの数値化できないものをどう見るかなんですよね。
例えばメルマガ会員10万件を持ってるサイトがあったとして、確かに数値上とても魅力ではあるんですがやっぱり質なんですよね。まあ、当然と言えば当然ですよね。
そのメルマガ会員の質をどう数値化するかというのは、たしかにその過去の全販売データまで覗けるならば、数値可できるんですが、表面上確かにそれは難しいんですよ。ですので、それはもう目利きですよね。
小林
はい。
長山
その商材で10万件リストがあって、でもリピート商材でなければその10万件あっても意味ないですし、どうやってその質を見極めるかもひとつです。
流通でいえば、例えば仕入れ販売であれば、メーカーさんや生産者さんとの関係性は重要です。
キャンペーンをやるときの仕入れ値の交渉が可能であるのか、そういうのもやっぱり有用です。数字だけで判断するのは危険かなあと、逆説的にですね。とは思います。
と買う側の視点でいえば3C分析ってあるじゃないですか。少なくともこれは掘り下げられるところまでは掘り下げて徹底的に調べるのが一番良いです。
また、エスクローサービスはそれもその一環としての保障というか保険的な部分の位置づけもあるかと思うので、そういう意味ではそれを使わずに買うというのは危険かもしれないですね。まあ、仲介に入っていただくと言うことは必須だと思います。
小林
先ほどサイトを売るところが「新しいECサイトの撤退の形」という事をおっしゃったのですが、メリットとしてどういったところがあげられますか?
長山
メリットは凄く多いと思います。あくまでこれは単純に閉店すると言う比較対象になってしまいますが、メリット自体はとても大きいと思います。閉店をするっていう判断をする前にそれらをしっかり理解していただけると、売りに出すという行為がハードルが低くなると思います。
これは先日古澤さんからもお聞きしたのですが、売り手市場で買い手が多いというのがそもそものメリットでよね。先ほどのECのショッピングモールの市場の通り、撤退する数というのはどんどん増えていくと思います。
そうなってきて売り手の方が多くなれば当然売れたとしても値がどうなるのかっていう問題も当然あると思います。まず売り手市場であることですので、売るならば今売るっていうのがやっぱり手だと思うんですよね。
ちなみに買い手の方ってやっぱりEC運営の経験をされている会社さんって多いんですか?
小林
多くないですね。半数以上が新規事業で始める方ですね。何かWEBの事業を始めたいんだけど何をしようかと検討されている方が、物を仕入れて売るっていうリアルビジネスに近い通販サイトを始めるというのは多いですね。
長山
そうなんですね、僕はもう7、8割ぐらいは運営経験者で、横展開で買って行くのかなあと思ってました。
なんでそれを聞いたかと言うとですね、EC運営経験者、出店経験者さんはもうほとほと知っていると思うんですけど、新規出店にかかる投資とかコストとかってすごいかかるんですよね。
実店舗よりかからないというのは確かにその比較検証自体がおかしい訳で、もっと言ったらお金で解決できない部分だって多い訳ですよね。出店してすぐに、顧客の会員リストを5万件集めたいと言って金をばんばん投資したところで、確実ではないし、そういうこと知っている買い手さんであれば、じゃ買っちゃった方が早いねっていうのがあるんです。僕も、過去に何百とECサイトを立ち上げましたが、またなんかやるなら、もう買いますよね。
小林
ですよね。
長山
買います。大変だし、たちあげは面倒なとこありますし、やっぱり買います。だからそういう市場が買い手側にあるんだったら、やっぱり今売るのがメリットだと思うんですよ。今のが一つ目のメリットですね。
次のメリットですが、ほとんどの売り手の方って、ご自身で立ち上げられた方が多いと思うんですよね。場合によっては、自分アプリケーションソフトを買って勉強して、時間と労力を費やして運営してきた方にとっての閉店ほど虚しいものはないと思います。それで閉店するのであれば誰かがもっと良い形で運営してくれればって。
単純につぶすんだっていうよりも、はるかに気持ちの部分のメリット、精神的なメリットというのもあると思います。しかもこれで値がつくのならなおさらですしね。
そして3つ目が取引先への配慮と言った義理の部分です。特に仕入れ販売の場合によくあります。仕入れ販売のECサイトを立ち上げる時に一番多いのが、商社でサラリーマンをやっていて、そこで取引のあるメーカーさんと凄く仲良くなり、そこから商品を安く仕入れてネット販売を始めて独立するというケースが凄く多いですね。まあそうなると、どこのお店でも売っている商品を扱う場合もある訳で、そうすると他社よりも安い値段をつけないと売れないという価格競争に巻き込まれますから、結構仕入れ値で苦労するわけですよ。
そこで仕入れ値を下げてもらえませんかと結構無理をしてお願いして卸してもらう。その後に失敗してしまい、メーカーとしてはそこからの売り上げがなくなってしまう。このときの売上って結構、メーカーとしてはかなり痛いところなんですよね。小さいメーカーや問屋レベルだと、これで連鎖倒産することも、結構あるんですよ。そういうところへの義理だったり配慮だったり。人道的に先ず考えるところですよね。EC事業者さんが撤退する時に。まあ、それがうまく引き継げるならば、というところの安心感は大きいと思いますね。
まあ、あと言えば、そもそも「閉店しました」という風に言うのと「売却しました」っていう言い方のイメージのとらえられ方ですよね。「サイトどうしたんですか?」と聞かれて「いや閉店しちゃったんです」というより「売却しちゃったんです」の方が企業イメージ的にはいいですからね。
ECサイトの根幹的な資産って何かと言えば、結局は顧客リストですから、それに対して多少でも値がつけば、全部は回収できないにしても、今まで運営してきたサイトを売却するという行為で多少でも今まで投資した分が回収できればこれははるかなメリットだと思いますよ。
そして最後にそのお金を元に新しい展開を新しい会社としての展開をするということも可能性とか将来性とかそういう幅の広さも十分なメリットだと思います。
小林
ありがとうございます。
長山
ちょっと話しを戻してしまうんですけど、なんでこんなに撤退する人が増えちゃったかというと、これはもう閉店しようとする人からすれば知ってることだと思うのですが、今だいたい30万店強国内でネットショップがあります。それだけあるとECサイトに求められるのは結局は専門特化によってくるんですね。○○専門店、何かに特化したもの、これはもう問われてきます。
これってユーザーがもう5年前ともう結果が違うくらい賢くなっている証拠ですね。それは良い意味でですよ。価格順に並べ替えて安いものを買うだとか、どこがポイントがつくのかとか、どこのお店が安心安全か、その検索するという行為が3年前と全然違います。良い道を探すということが当たり前になっています。その中でどう特化するのかということは凄く大きな問題になっています。やっぱり、単純に30万店もあれば露出自体が落ちますから、先ずそこで打つ手は、じゃあ広告を出そう、となります。
その広告費がかさみ収益が落ちてしまうというケースがもの凄く多いですね。モールの中のことでいえば年々広告費自体は上がっているんですね。毎年20%ぐらいずつ上がっているんです。もうその負担が耐えられないんですよ。これはかなり大きな問題ですね。広告費が高くなって、しかも、販売手法が多様化してきています。ECサイトをイメージすると単純にカートに入れて購入するというのを思い浮かべると思うんですが、これがいわゆる通常購入です。
ただ販売形態はそれだけではなく、共同購入もそうですし、オークションもそうです。あとは定期購入であったり、頒布会。いろんな販売手法が確立されてきていますから、それらの多様化に対応するにはそれらすべてに販売戦略がややはり必要な訳です。通常戦略と同じやり方で共同購入は絶対できませんし、そうすると研究する人員自体がそもそも足りなくなる。同時に広告費が上がってくる。経費がかさむ。この状況が凄く多く見受けられます。で、その状況のなか、お金を出さずにどう販売するか、それこそ今SNS等でこんなやり方がありますよっていう、いろんな会社さんがそういう広告をだしたりしているのですが、あれ自身僕は直接的に販売に繋がるツールとしては懐疑的ではあるんですけね。
ただ、いずれにしても個を売る、というお客様とのコミュニケーションをどうするかという事は確かにお金をかけずに売るという方法の方向性としてはありかもしれないのですが、ただ、そうすることによって、そのサイトの担当者にお客さんがついてきてしまう。そうするとその方が急に辞められてしまうと、新しい担当を入れてもその人のようには売れない。属人的要素が強くなるんです。その方が病気で急に倒れられたら、その期間は店舗がストップしてしまうという状況も多いですね。
総括していえば月商200万円以下ぐらいのECサイトでじり貧状態で運営しているお店は7割ぐらいあると思います。
小林
そんなにあるんですね。
長山
ちょっとネガティブアピールみたいになってしまいましたが、現状そうだと思います。
小林
ありがとうございます。
小林
今後、サイト売買の市場やサイトキャッチャーに対してこうなって欲しいとか、要望はありますか?
長山
いろいろありますね。悪い意味ではなくて(笑)、EC事業者が成熟期間に入っており、淘汰されてきています。その中で僕らのような支援事業を行っている会社はある意味ではお客さんがどんどん来る状態ではあります。ただ、僕らのような事業者は支援する側ですから、できる限り支援するのですが、そこが追いついていないんです。EC業界自体がそれを越えるニーズがでてしまってますね。
弊社においてもキャンセル待ちという状態になってしまっています。まあ、それを見かねてという訳でもないのかもしれませんが、やっぱりここ1年でいわゆる悪徳企業が凄く増えた。なのでそういう会社にお願いしてしまったら悲惨ですよ。
閉店も視野に入れていたけど、続けたいという思いが強くてそういった悪徳企業に騙されてしまって、最終的に何も残らず結果閉店というのが一番辛いです。まあこうなってしまうと最悪の撤退の仕方ですよね。こんな後味の悪いことはないですし、どうせ撤退するなら前向きな撤退というか、やっぱりECサイトを売って撤退するという事が望ましいです。
ただ、サイト売買に対してどうしても業界全体で知らないということが先ず第一にありますけど、サイト売買といいものを知っていたけど、結局どうすれば良いんだろう、契約とか手続きが面倒くさいのではないかと言う障壁がある方もいらっしゃると思います。
そういうのをどんどん払拭して行ってもらえばもっと売る人がどんどん増えると思います。サイトを売却して撤退する人が多くなれば、EC業界自体も逆に盛り上がると思いますので、ぜひサイトキャッチャーさんにはそのあたりをお願いしたいですね。
小林
ありがとうございます。EC業界の盛り上がりに貢献できるよう、サイト売買が認知されるように、頑張ります。
本日はありがとうございました。
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