売却事例|事業売却の決断の経緯と理由【マニュアルつくり株式会社】

今回は、新規事業をやりたくて、既存事業を売却したマニュアルつくり株式会社の代表である猿谷吉行さんに事業売却に関してインタビューいたしました。

事業売却というと売り手側は「高く売る」ための駆け引きをイメージされる方もおられるかもしれませんが、猿谷社長のように次の事業をするために既存事業を売却するケースも増えております。

 

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スマホ修理事業を売却を決断した経緯について

スマホ修理事業を売却しようと思った経緯をお教えいただけますか。
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猿谷さん
2015年頃にスマホ修理の店舗売り上げが増え、1店舗4坪くらいで1店舗で1,200万円くらい売上があった時、店舗数を増やそうと思ってアルバイトの人員を増やしたのですが、入ってきたばかりのアルバイトが1日何もしなかった。という日がありました。
猿谷さん
そこで、慣れていたスタッフに「なぜ何も教えてないの?」と聞いたら「忙しくて、教える時間がなかった。」ということだったのです。
猿谷さん
そこで、新しいアルバイトが入ってきたら半日で仕事ができるように、スマートフォンのアルバイトへの教育から実務運用まで、すべてをマニュアル化しました。そこから2~3年で形になってきたので店舗数を増やそうと思ったら、今度は売上が落ちてしまいました。

猿谷さん
その頃からマニュアルを作ったり、仕組みを作ったりすることに着手していました。
猿谷さん
65歳までに年商2500億やります」という目標を持っているので、このまま、スマートフォンの修理店舗をいくら増やしてもそこまでいかないなと。感じてました。
猿谷さん
売り上げが落ちたことで、当時の会社の役員と「今の事業を立て直して売上を伸ばすのか、数年前から計画していたマニュアル作成事業を本格的に開始するのでは、どちらが2500億に近いのか?」と相談しました。
猿谷さん
そこで、今の事業は現状維持が精一杯になってしまうので、2〜3年後に開始しようと思っていたマニュアル作成事業に注力したほうが2,500億円達成に近いだろうっという話になりました。それなら迷うことはないだろうということになって。それが2019年の5月くらいでした。
なるほど!2500億円達成する目標から逆算され売却しようと思ったのですね!
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猿谷さん
そうです。ただ、いきなり売却を決めた訳ではなく、会社を今後、どうしようかということになって、そこで考えた選択肢は3つでした。
猿谷さん
まずは、社内の誰かに社長を譲ること。次に、今の会社を潰して新しい事業をスタートすること、最後に事業売却でした。
猿谷さん
とにかく、事業に集中できる環境をつくることが、新しい事業の成功率を上げる方法だと感じていました。そしてまず真っ先におこなったのが、社内の人に会社を譲り社長を交代するという選択でした。
猿谷さん
社内で社長候補者に話したのですが、「社長をやる自信がない」と言われて選択肢が消えました。
猿谷さん
そこで売却を考えたのが、2019年7月頭でした。
猿谷さん
まずは、M&A仲介のサイトに出したのですが、冷やかしみたいなのが多くて時間をとられてしまいました。スマートフォンの修理とかの技術系の会社だったので、関係ない業種の方が儲かるから買う!と言ってくれる業種ではないということがよく分かりました。
普通のサイト売買と違って店舗があって修理を行う部分で、知識ない人は手を出しにくいですよね。
intarview
猿谷さん
売却先の会社を紹介してもらったのが、2019年の9月末くらいでした
猿谷さん
すぐに代表の方とお会いして、売却が大筋決まったのが11月末です。最終的に、同業者と仲介からの紹介2社で競ってました。

事業売却を決めた理由について

売却を決めた要因は何だったのでしょうか?
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猿谷さん
まずは、買収金額です。あとは事業売却したら、ほったらかしにするのではなく携わっていこうと思っていたので、売却先に決めた会社は、スマートフォンだけではなくパソコンの修理といった事業や、今後大きく成長しようとされていたので、売却しても会社にとって、プラスになるなと思って決めました。

事業売却後の気づき

実際に2020年1月に譲渡完了して引継ぎされていると思うのですが、引継ぎをしている中で、気づいたことはありますか?
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猿谷さん
売却先が上場している会社なので、会社の進め方とかスタッフの使い方とか、自分自身はスタッフに甘くて責任を負わせたりとかしていなくて全部社長がおぜん立てをしてあげてスタッフはそのままやればよいと思っていたのですが、売却先は売り上げ目標とかを達成しようと必死になってやっているのでそのあたり、うまいなと思いました。
猿谷さん
僕はやっぱり仕組みを作るのは好きだけど店舗を運営するのとかはあんまりうまくないなって、自分でやっている時から気が付いていましたが、再確認しました。
猿谷さん
また、個人的には買ってもらったのにその価値があるのかなとドキドキして不安ばかりでした。打合せに参加するときにも「どうやったら、価値を最大限提供できるかな」って思っていました。
猿谷さん
売った後に顧問として参加して、勉強になる点は多いですし面白いです。ずっと自分でやってきたので他社のことをしかもトップではない位置で見て考えるのは、売却して気が付いた良い面だと思います。

これから事業売却を検討されている方へ

これから事業の売却を検討されている方へのアドバイスはありますか?
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猿谷さん
売却のお話をすると大概自分の想定よりも低い金額になります。なので、お金欲しさだけで売却すると、もっと高く売れたのではといった心残りがあって良い結果にならないと思います。
猿谷さん
僕の場合は、何が何でも次の事業をやりたかったんです。どうやっても次の事業をやりたい、2500億を売り上げるという大きな目的があったので、そこに行くために事業転換を図ってもっとやりたいという大きな目的があったので、だから細かい条件にはこだわりはなかったんです。
たしかに、売り手さんが条件にこだわり過ぎて契約が締結しなかったというのはよくある話ですしね。
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猿谷さん
次の事業をより優位に進めるために売却金額をあげたりする作業はありますが、目的はそこではなかったんです。でも金額アップだけを目標にしてしまうと全然進まないと思います。
猿谷さん
僕の周りでも多いのですが、より高く売りたいとかお金がいっぱい入ってきたらいいな、という感じでやっていると多分永遠に売れなくてだらだらとしてしまうと思います。
猿谷さん
会社を売ると言うのは「自分ではその会社を伸ばす範囲が見えてしまっている。」ということだと思っています。自分の始めた事業を続けられないと思った時点で、その事業に関しては負けたと認識しています。まだいけると思っていると、いつまでも踏ん切りがつかないので私は負けを認める事にしました。
猿谷さん
これは私の事例であって、大手の企業に買収してもらうことでシナジーがあって事業を伸ばせると行った考え方も正しいと思います。
猿谷さん
要は、何のために売却するのかという目標が大切だと思います。今が苦しいから、お金を得て引退したいという目標では、売却もうまく行かないし苦しさも続くと思っています。

M&Aについて

猿谷さん
事業売却によって得たものをお話させてください。
猿谷さん
M&A(株式譲渡、事業売却)を仕事している中で意識しておくのは、すごく良いことだと思います。なぜかというと自分がやってきた事業に対して数字で明確に表されるからです。
猿谷さん
自分が事業をやってきたときには事業がうまくいっている時に売却したいと思っている金額に対して、実際に売却をしようと思って動くと、想定の10分の1にも満たない金額で愕然とします。でも、そこからがスタートだと思います。
価値を外部の人から判断されるいい機会ということですね
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猿谷さん
売却したと言っても、ほとんど残っている在庫を売っただけで利益は残らなくて赤字だけ残ったという会社多いと思います。
猿谷さん
売却によって、会社自体の価値の見直しもできるので、M&Aはやれるチャンスがあるならやってみるべきだと思います。ものすごく強くなります。
猿谷さん
うちでいうと店舗数でいうと多くなかったので、そこで興味をひくことはできなかったんです。でも一生懸命作ってきたマニュアルを相手が「価値がある」と認めてくれたので良かったですが、そうでなかったら会社の外部からの価値はないです。
猿谷さん
売ってみて感じたことですが、売ることを考えるなら3年くらい前から準備しないといけないと思います。
猿谷さん
普通は日々の業務に一生懸命になっていると、いざ売ろうと思ったときには、その事業は多分利益以外は他の人から見た時には価値はなくなっています。出ている利益や在庫や資産以外には評価は全くつかないです。
猿谷さん
だから、売りたい、売ろうと思うのなら3年くらい前から準備をしなければいけないです。情報を色々得たりとか。そうでないと売れる価値のある会社にならないです。
ありがとうございます。最後に、これから取り組まれる新事業についてお願いします。
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マニュアルつくり株式会社の新規事業について

猿谷さん
新事業は企業向けのマニュアル自体を提供するのです。最近の人たちって何か新しいことをしようっていう時に、ゼロから経験しようっていうのはなかなかハードルが高くてできないんですが、マニュアルがあることで人が入ってきて仕事を経験できる、っていうことがあったので、新しい会社では業務知識のない未経験者や外国人労働者が安心して新しい仕事に就労する手助けをしようということを考えています。
猿谷さん
ただ、マニュアルって経験や業務知識がある人から作るのですが、まずは、日々やっている業務をデータとして残していくという作業があって、そのあとマニュアルを作っていったほうがいいのかなと。
猿谷さん
そのためには、資金調達をして、業務用のDXツールリリースしていこうと考えています。
すでに、新規事業に邁進(まいしん)されてますね!
intarview
猿谷さん
また、新しい会社をやっていく上で売却経験者として、いつでも売れる会社作りをしようと思っています。
ありがとうございました。
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